九州杢人の会2024年春の研修 大分県別府〜由布<後半>赤野の森
赤野の森の2間
高崎山と向き合う高台の上の2間×7.5間の建物は、南北に大きな掃き出し窓を開け放って、この地の大気を一枚の屋根と数枚の土の壁で仕切っただけというシンプルな形で、風景の中に溶けこんでいる。
だから、室内の空気は外の大気そのもので、それがなんとも爽やかなことは当然なのだが、この爽やかさは、ひとり人間だけが感じるものではないのだろう。杉も土も人間も粒子となって2間の大気の中に漂い共鳴しあっている、そんな爽やかさなのだ。
2間という寸法は、人間が木で建てようとするときに、木が人間に要求する根本的な寸法なのだと思う。寺社も民家も2間をひとつの単位として造られてきた。杉やヒノキが要求してくるこの原則に、人間はただ従うしかない。
そしてそれは、法隆寺の妻室の2間と共鳴する。
渡り腮構法の原点と勝手に位置づけている妻室は2間×27間の建物で、2間の切妻は、柱と梁と漆喰の組み合わせにはこれしかない、という原型を表していて美しい。この建物の切妻もそれに迫ろうとしているかのようだ。
この地に2間を選んだのは蓑原さんなのか、それとも高崎山なのか?
(丹呉明恭)